Interviewインタビュー
株式会社基行
Interviewee
豊島 一恵(とよしま かずえ)| 株式会社基行 常務取締役・管理部長
小売業、ホテル業を経て、2002年に株式会社基行に入社。総務配属後、2015年から人事課に配属。2016年から人事部長に就任。現場に即した人事を目指し、自ら現場へ足を運び、現場と協力して離職対策、採用活動を行う。
会社概要
株式会社基行
株式会社基行(きこう)は1967年12月に基行運輸株式会社として設立。千葉県富津市を拠点にして、鉄鋼製品の港湾荷役を軸に、陸送、建設、鉄筋加工、太陽光発電など幅広い事業を展開。従業員280名。
【HP】http://kk-kikou.co.jp/
【採用情報】http://kk-kikou.co.jp/recruit/
【採用者向けパンフレット】http://kk-kikou.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/08/Company-Brochure-recruit.pdf
Interviwer
玉井 生(たまい せい)| ロジHR株式会社 代表取締役社長
会社の成り立ちについて
玉井
豊島さん本日はお忙しいところお時間を頂きましてありがとうございます。最初に会社の概要や自身のキャリアについて教えて頂けますか?
豊島
弊社は株式会社基行(きこう)と申しまして、鉄鋼業界の物流がコア事業です。主に大手製鉄会社の君津製鉄所から出荷を担当しています。
本社は千葉県富津市で、今年で56期目、社員は約250人です。
君津市にある大手製鉄会社の製鉄所の立ち上げ時から事業を継続しております。歴史が長く、安定性もある企業です。
私は管理部の部長を務めています。入社してからずっと人事に携わっています。人事課長、人事部長を経て現在のポジションに就いています。
港湾における仕事の課題
玉井
私の偏見かもしれませんが、港湾での仕事は、男性の方が多く活躍しているイメージが強かったのですが、そんなことはありませんか?
豊島
一般でいう港湾と言われる業界では、おっしゃる通りです。しかし弊社の場合は、大手製鉄会社の構内作業で、一般的な港湾とは少し違ったイメージかもしれません。
玉井
ありがとうございます。人事に長く携わっていらっしゃると人材採用や人材教育も時代によって変化があり、課題も多くありますか?
豊島
私が入社して約20年。入社当時の頃は本当に人が溢れていました、ちょっと声をかけ、募集を出せばどんどん採用できる状況でした。しかし、ここ数年は世間的にも取り上げられているように、人口減少による人手不足が顕著に表れています。
また弊社の場合は中小企業ということで、どうしても周辺他社や元請け子会社も含めて、競合他社と採用活動を争わなければいけないという現実があり、結構シビアな状況です。元請け会社が忙しくなるタイミングで、一斉に募集活動が行われ、仕事内容、給与、勤務形態も類似しています。
一番の悩みは新卒採用です。新卒採用は始めてから10年ぐらい経ちます。10年前は少し学校を回れば、十人とか集まるのが普通でした。しかし、現状は費用や時間(採用リソース)を10年前よりもずっと手厚くかけていますが、年々採用人数は減少し、2023年4月の採用は「0」になってしまいました。
少子化もありますが、色んな意味で鉄鋼業界のイメージの低下、交代勤務で夜勤があること、休みが不規則なことなど様々な理由が重なり、みるみるうちに不人気業界になってしまいました。厳しい状況が続いています。
港湾における採用課題を解決する為に
玉井
そんな状況下ではありますが、新卒採用やその他、力を入れていらっしゃることはございますか?
豊島
弊社は高校新卒の採用がメインです。学校を訪問する際は、同校出身の先輩社員を一緒に連れて行っています。
また、地域貢献にも力を入れています。採用には直接繋がりませんが、地域の少年・少女のサッカー大会を開いたり、地域のお祭りへの参加、クリスマスにはちょっとしたサプライズプレゼントを養護施設に持っていったりなど、その子たちが大きくなったら株式会社基行を覚えてくれたらいいなと思っています。そういった取り組みがどこかで何かにつながるかもしれない。採用だけを目的で行っている訳ではないのですが、地域貢献は続けていきたいです。
玉井
なるほど、すごく良い取り組みですね。人が足りない場合はどのように乗り越えているのですか?
豊島
採用が厳しければ、当然今いる人たちで対応します。多能工化して、なんとか乗り越えているのが現状です。
根本的には人を増やすために、弊社は二つの柱を持って取り組んでいます。
1:離職対策
一つ目が「離職対策」。
せっかく入ってくれた仲間を離職させない。離職問題に対して重要なのは従業員同士が仲間への関心を高めることに尽きます。
以前は新卒の子たちが入ってきても、なかなか馴染まないままで、離職率も高かったです。現場からスタートしてくれたことなのですが、「環境を変えていこう」と仲間への関心を高める活動をしてくれました。結果として、離職率が5〜6年で20%から10%まで下がりました。やっぱり自分達で自分事としてやっていくのが一番の正解なのかなと思います。
2:採用の見直し
二つ目が「採用へのスタンス見直し」。
今までの活動が結果に繋がっていないので、採用スタンスから思い切ってきちんと見直しました。また、それこそ今年からSNS活用にも力を入れ始めました。
従来の採用活動は、学校周り・地域貢献など出来る事を中心に進めていました。しかし、チャネルを変えてSNSの活用、ソーシャルリクルーティングというところへチャレンジしています。
この業界の君津地区で活用している会社さんが少ないので、小回りが利く中小企業という利点を活かし、思い切ってスタートしました。
Instagram(https://www.instagram.com/kikooou_ltd_insta/)をメインに使っています。
こちらのコンセプトが仲間探しというコンセプトのもと、現場の従業員たちが中心となって、一緒に始めています。
これからは「仲間探しの旅」をして進む
豊島
今までは「とにかく人集めをしよう、入ってくれる人がいれば誰でもよい。」という感じだったのですが、それが結果的に離職率を高めており、何よりも現場で働いている人たちに対してこのスタンスは非常に失礼だとも気づきました。
そもそも経営陣の「誰でも良い」という考え方を根本的に見直した上で、一緒に働く仲間を探そうという、「仲間探しの旅」のような形でこれからは進んでいくイメージです。
玉井
素晴らしいですね。「仲間探しの旅」、いいですね。計画的な採用ですか?業務量に合わせて採用して行く?など採用方針は決まっていますか?
豊島
そうですね、これまでは欠員を埋めていくのが主流でした。
けれども、正直なかなか都合よく採用できる時代でもないので、プラスアルファで仲間が増えてくれればいいという形に変わってきています。
製鉄所での仕事は何百社という関連会社が受けているので、同じ地域で人材を取り合っているような形です。コロナ影響前までは、東北地区・県外での採用をしていました。しかし、地方の最低賃金も上昇してきたこと、そしてコロナの影響でご家庭の方も、ご本人も、人の多い地区に移動することに対する大きな抵抗感もあり、地方からの採用が難しくなりましたね。
また、「地元を大切する」ということも大切にしています。
大企業に一般的な採用市場で対抗するのではなく、口コミで入社した場合が、一番離職が少なく、結果が出ています。
人手不足だから、単純に募集を増やすとかそういう話ではなく、どちらかというと、今いる従業員に魅力を感じてもらって、その人たちの口コミできてもらう。そのためにもリアリティがあるSNSによって、現場の雰囲気をよりリアルに伝えていくことが、重点施策です。
現場の従業員と色々話していくうちに、人事採用担当者が考えていることと、現場で実際働いている人たちが感じていることに、乖離があることもわかりました。彼らの一つ一つの日常生活の中に採用するヒントがいっぱい隠れています。
まあ、そういったものを、もっと早くに気づけばよかったのですが、ちょっと遅くなりました。ここから挽回します(笑)
みんなが一緒に働きたいと思っている人たち、今まで我々では届かなかった人たちの層に、アプローチをしていきます。
玉井
貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます。非常に勉強になりました。きっとこの先も困難は多いと思いますが、引き続き面白いチャレンジを期待しています。
本日はお忙しいところ貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。